世界中での需要増加に伴い、
スコットランド、アメリカ、アイルランド、カナダ、日本
といった今までの『5大ウイスキー』以外にも、世界の様々な国で蒸溜所が設立され、日本においてはまだ知名度は低いですが高品質なウイスキーがどんどん作られています。
本記事では、その中でも近年賞を受賞したり、評価を高めつつある業界から注目を集めているニュー・ワールドのウイスキーをご紹介します。
今までの『5大ウイスキー』が入れ替わる未来もそう遠くはないかもしれません。
フランスのウイスキー(フレンチウイスキー)
ウイスキーの消費量第3位のフランスには現在、様々なスタイルのウイスキー蒸溜所が25ヵ所以上あると言われています。
ごく少数の「ウイスキー専門」の蒸溜所を別にして、ウイスキー生産のほとんどは、フランスが誇るフルーツ・ブランデーを専門とする既存蒸溜所で行われているようです。
フレンチオーク(ワインやブランデーの古樽)で熟成させている蒸溜所が多いことが、フレンチ・ウイスキーの特徴です。
現在、ブルターニュ地方には大手蒸溜所が3つあり、最初に設立されたのが下記のヴァレンギエム蒸溜所です。
リリースされている銘柄のなかでも、「アルモリック ダブル・マチュレーション」は、WWA2012においてもベスト・シングルモルト/ニューワールド」部門の「12年以下」カテゴリーで受賞しています。
特別なブルターニュ産オーク樽で熟成を行った後に、へレスから取り寄せたシェリー樽で後熟。柑橘類やリンゴを思わせるフルーティーでエレガントな味わいが特徴。
インドのウイスキー(インディアンウイスキー)
ウイスキーの消費国ナンバーワンは、インドだということをご存じでしょうか?
イギリスの植民地だった時代に、インドにいるイギリス兵のためにスコットランドのウイスキーが大量に輸入されたことがインドウイスキーの生産がはじまるきっかけになりました。
インドで最初にウイスキーを生産した会社はアムルットというメーカーで、今では世界22か国でウイスキーの販売をしています。
“アムルット”とは「人生の霊酒」という意味。1948年に創業の蒸溜所。
アムルット蒸留所がリリースするインド独自のシングル・モルト・ウイスキーのなかでも、ウイスキー・バイブル2010年において、著者であるジム・マーレイが「世界3位のウイスキー」と評価をしたのが、この「フュージョン」です。
同書において100点中 97点という高得点をマークした事には、世界中のウイスキー業界を驚かせた逸品。
ほどよいピーティーさ、カスタードの甘み、濃厚なチョコレートやシェリーにつけたドライフルーツの奥深い味わいを感じられます。
うっとりするようなインディアン・シングルモルト・ウイスキーです。
アメリカのシングルモルトウイスキー(アメリカンシングルモルト)
ウイスキーの消費量第二位のアメリカ。アメリカンウイスキーといえばバーボンやライウイスキーが有名ですが、
近年になり新たに『アメリカンシングルモルトウイスキー』という新しいジャンルの蒸溜所が小さいながらも誕生しています。
特に、先駆者であるシアトルにあるウエストランド蒸溜所は、2010年に開業されるとともに品質の高さから世界中で評価を高め、年々注目度が上昇しています。
サンフランシスコ ワールド スピリッツ コンペティション 2015
CRAFT WHISKEY of the YEAR 受賞
シェリー香の風味からドライフルーツ、ほのかに清涼感あるメンソールを感じる。
リッチな味わいでふくよか。
樽香、メープルシロップのような甘さが広がり飲み応えがある。
他にもこれから期待されるマイクロディスティラリーが各地で誕生しています。
特に私の個人的なオススメボトルもありますので、こちらの記事も参照ください)
イングランドのウイスキー(イングリッシュウイスキー)
ウイスキーの本場、スコットランドやアイルランドの隣、イングランドでは2006年におよそ100年ぶりに「イングリッシュ・ウイスキー」が復活しました。
それが下記のセント・ジョージズ蒸留所です。セントジョージズ蒸溜所は、現在のところイングランド最大の生産量を誇るモルトウイスキーのメーカーで、07年3月、当時イングランド唯一の蒸留所としてチャールズ皇太子によって正式に操業開始を宣言されました。
ノンピートとピーテッドを併用し、主に最高級のバーボン樽で熟成しているが、一部シェリー樽やワイン樽も使用。着色料は一切使用していません。
上記のボトルは、ファーストフィルバーボンバレル由来の華やかなバニラの風味にスパイスのパンチが効いたシングルカスクです。
カスタードと青りんごや桃の甘く華やかなアロマ。バニラクリーム、アップルパイ、ハチミツの甘みをジンジャーと粗挽きのコショウが混ざったような暖かみのあるスパイシーさが一気に包み込み、フィニッシュにかけてライチが鼻に抜けて行きます。
イングリッシュウイスキーの可能性に思わず期待してしまうほどの、とても素晴らしい仕上がりのウイスキーです。
他にも私の個人的なオススメボトルもありますので、こちらの記事も参照ください)
上記のコッツウォルズ蒸溜所では、熟成には主にシェリー樽を使用し、バーボン樽はごく少量。濃厚でエレガントなシェリー樽熟成のスタイルが特徴。
ウェールズのウイスキー(ウェリッシュウイスキー)
イギリス本島南西部に位置するウェールズ。一説には、スコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーよりも歴史が古いと言われています。
約100年もの間ウイスキーの生産は行われていませんでしたが、2004年3月1日にチャールズ皇太子同席のもとペンダーリン蒸留所により復活を遂げました。
スコッチウイスキーやアイリッシュウイスキーにも使用していない、全く新しい蒸留器を使用し、芳醇なコクと樽の香りが楽しめる唯一無二の逸品に仕上げております。
上記のボトルは有名なウェールズの詩人、ディラン・トーマスの生誕100周年を祝うために限定で生産されたボトルです。バーボン樽で熟成し、シェリー樽でウッドフィニッシュ。
クリーミーなタフィーとバニラの香りが漂う砂糖菓子、ペンダーリン独特の新鮮な青林檎、ベリー系の果物の香りが感じられ、オロロソシェリーと繊細な白すぐりやメロンのような甘さが特徴。
台湾のウイスキー
台湾には、ウイスキー好きの間でファンの多いカバラン蒸留所があります。2008年のリリース開始からわずか10年で、国際コンペティションで数々の賞に輝いています。
気温が高く熟成が早くすすむため、年数は若いですが味と香りの濃いキャラクターのハッキリした特徴的なウイスキーです。(エンジェルシェア、熟成スピードもスコットランドの3〜5倍早い)
数年前に私が訪れたときは、ちょうど蒸留器を増設している最中でした。
現在、蒸留の要となるポットスチルは20機を有しており、生産量は年間1000万本と製造能力としては世界で10本の指に入る規模です。中国や日本、世界中からも人気が高いウイスキーです。
リリースされている銘柄の中でも良さをよりダイレクトに感じられるのがシェリー樽系で、カバラン特有のトロピカルなフレーバーの真価を発揮しています。
東京ウイスキー&スピリッツコンペティション 2020 金賞受賞
「コンサートマスター」。
アメリカンオーク樽で熟成後、フィニッシュにアメリカンオークのシェリー樽を使用。
淡いアプリコット色で、甘いバニラとタフィーの柔らかなアロマに、クルミやナッツの複雑さを感じる味わい。カバラン特有のトロピカルフルーツを感じる口当たりが特徴です。
他の種類も南国フルーツが感じられる高品質な銘柄も多く、初心者の方でもわかりやすい味わいのウイスキーです。
オーストラリアのウイスキー(オーストラリアンウイスキー)
過去130年、オーストラリアは1人あたりのウイスキー消費量では世界一でした。
現在もオーストラリアで一番人気のスピリッツはウイスキーであり、オーストラリアでの全スピリッツ消費量のほぼ半分を占めています。
小規模蒸溜所ブームが始まった1990年代以来、約50社のメーカーがウイスキーを生産してきましたが、蒸溜所はみな小規模で、生産量も安定していないようです。
スターワード(Starward)は、2007年にオーストラリアのメルボルンにて創設。
100%オーストラリア産モルトを使用し、ベリーやぶどうの香りが特徴的な、オーストラリア産の赤ワイン樽で熟成したシングルモルトです。
『オーストラリアンウイスキー』は1992年にタスマニアで始まり(下記記事の「サリヴァンズ・コーヴ」と「スモール・コンサーン」)、その後、本土のオーストラリア大陸でも新しい蒸溜所が各地で誕生し、現在、オーストラリアの蒸溜所の3分の2以上が本土にあります。
銘柄については、こちらの記事も参照ください。
タスマニアのウイスキー(タスマニアンウイスキー)
現在9ヵ所あるタスマニア島の蒸溜所のなかでも、特に抜き出た高評価を得ているのがサリバンズ・コーブ蒸溜所です。
WWA2014で世界最高賞「ワールドベスト・シングルモルト」に輝き、それ以降世界中から注目されているタスマニアンウイスキーです。
アメリカンオーク樽原酒とフレンチオーク樽原酒が織りなす絶妙なコンビネーション。果実の華やかな香りに加えて、ふくよかなモルトの味わい、ドライアプリコットや蜂蜜を思わせる甘みと焼いたパンのような香ばしさを感じます。余韻はスパイシーかつクリーミー。柔らかでいて複雑さをあわせ持ったウイスキーです。
スウェーデンのウイスキー(スウェディッシュ ウイスキー)
ウォッカやアクアビットが広く飲まれている北欧でも、『ウイスキー界のスーパールーキー』と評される北欧モルトがあります。
それがこちら、2010年創業のハイコースト蒸留所です。
スカンジナビア半島独特の気候は、夏と冬で実に 60度を超える気温差を産み出し、樽内のウイスキーは常に浸透と溶出を繰り返しており、そのシーソー効果が成長を加速させ、驚くほどフルーティーなエステルを樽内に生成します。
この「エルヴ」はスウェーデン語で『川』という意味で、仕込み水として使用されるオンゲルマン川に、敬意を込めて名付けられました。ノンピート麦芽を用い、1stフィルバーボンカスクにて6年間熟成。樽由来のバニラ香に加え、洋ナシのフルーティーな香りが後に続きます。まずは是非、ストレートでお試しください。
まとめ
本記事では今後ますます注目されていくであろう、高品質なニューワールドのウイスキーたちをご紹介しました。
スコットランドから輸入したウイスキーをブレンドしたり、輸入したものを自国で少し寝かせてから混ぜて出しているところもありますが、今回は蒸留から熟成までの生産を自国で行っているウイスキーをご紹介しました。
21世紀に入り、本記事でご紹介した銘柄以外にも、様々な国と地域でウイスキーの蒸溜所が勃興しています。
伝統のあるスコッチと肩を並べる高品質なものも多いので、固定観念に縛られず、気になる国や銘柄が見つかれば一度試してみてはいかがでしょうか。
補足
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